
口約束は建設業法違反⁉請負契約19条の罰則リスクと「法定16事項」の鉄則
民法の感覚で「口約束」や「着工後契約」を続けると、営業停止や許可取消しのリスクも。
見積期間の数え方や、資材高騰の価格転嫁に欠かせない法定16事項について、条文を基に徹底解説します。

「その工事、まだ口約束で進めていませんか?」
建設業法において、工事請負契約は「着工前の書面締結」が絶対条件です。
口約束や、工事が始まってからの契約締結は、それだけで建設業法違反(19条違反)となります。行政処分や許可取消しのリスクを避けるための「正しい契約ルール」を整理しましょう。
一般的な民法上の請負と異なり、建設業法の請負は「適正な施工」を守るための厳しいルールが加重されています。
特に「仕事の完成」だけでなく「建設工事の完成」を目的とする点が重要です。
| 比較項目 | 民法(一般) | 建設業法(工事) |
|---|---|---|
| 目的 | 仕事の完成 | 建設工事の完成 |
| 契約の成立 | 合意のみ(口頭OK) | 書面の相互交付が義務 |
| 特有の制限 | なし | 一括下請負禁止・技術者設置など |
元請が下請に見積依頼をする際、下請が内容を検討するための法定期間を空けなければなりません。
これを無視した強引な依頼は建設業法違反のリスクがあります。
※②③はやむを得ない事情に限り、5日以内の短縮が認められます。
契約書には以下の項目を盛り込むことが義務付けられています。特に「価格変動に伴う代金変更」は、昨今の資材高騰対策として極めて重要です。
契約書に記載するべき事項
| 第1号 | 工事内容(曖昧な「一式」は避ける) |
| 第2号 | 請負代金の額 |
| 第3号 | 着手および完成の時期 |
| 第4号 | 施工しない日・時間帯 |
| 第5号 | 代金の支払時期・方法 |
| 第6号 | 設計変更・延期時の変更ルール |
| 第7号 | 不可抗力による損害負担 |
| 第8号 | 価格変動に基づく代金変更 |
| 第9号 | 第三者への損害賠償負担 |
| 第10号 | 資材提供・機械貸与の定め |
| 第11号 | 検査時期・引渡し時期 |
| 第12号 | 完成後の代金支払時期 |
| 第13号 | 契約不適合(瑕疵)担保責任 |
| 第14号 | 遅延利息・違約金 |
| 第15号 | 紛争解決方法 |
| 第16号 | その他省令事項 |
💡 実務のポイント:価格変動(8号)への備え
2024年法改正で義務化された「おそれ情報」の通知は、この8号の規定を円滑に運用するためのものです。
契約前にリスクを共有する方法は以下の記事で詳しく解説しています。
実務に合わせて、以下のいずれかの方式で契約を交わす必要があります。着工前締結が絶対ルールです。
① 契約書方式:1冊の契約書に全項目を記載して相互交付。
② 基本契約+注文書・請書方式:基本契約に共通ルール、個別注文書に工事内容を記載。
③ 注文書・請書(約款添付)方式:注文書に個別項目を、裏面の約款に共通項目を記載。

①工事ごとの個別契約による場合
個別契約には上記で記載した16項目を記載し、当時者の署名及又は記名押印をして相互に交付
②当事者間で基本契約書を取り交わしたうえで、具体の取引については注文書及び請書の交換に寄る方法
1. 基本契約書には第5号~15号に書掲げる事項を記載し、当事者の署名又は記名押印をして相互に交付
2. 注文書・請書には1号~4号までに掲げる事項、その他必要な事項を記載
3. 注文書及び請書には、それぞれ注文書及び請書に記載されている事項以外の事項については基本契約書の定めによるべきことを明記
4. 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名⼜は記名押印をして下さい。
③注文書及び請書のそれぞれに、あらかじめ同意した内容の基本契約約款を添付⼜は印刷する場合
1. 注文書及び請書のそれぞれに、同⼀の内容の基本契約約款を添付⼜は印刷して下さい。
2. 基本契約約款には、注文書及び請書の個別的記載事項を除き、法第19条第1項第5号から第15号
(前頁の5〜15)に掲げる事項を記載して下さい。
3. 注文書⼜は請書と基本契約約款が複数枚に及ぶ場合には、割り印を押して下さい。
4. 注文書及び請書の個別的記載欄には、法第19条第1項第1号から第4号(前頁の1〜4)までに掲げる事項その他必要な事項を記載して下さい。
5. 注文書及び請書の個別的記載欄には、それぞれの個別記載欄に記載されている事項以外の事項については基本契約約款の定めによるべきことを明記して下さい。
6. 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名⼜は記名押印をして下さい。なお、双方の合意がある場合は、書面交付による手続きに代えて国土交通省令で定める情報通信の技術を利用した措置を講ずることができます。

下請契約を締結し、さらにその下(二次下請など)が発生した場合は、「再下請負通知書」の提出が必要です。現場の透明性を確保するために欠かせません。
建設工事の請負契約は、単なる「書類のやり取り」ではありません。
適切な書面契約を締結することは、トラブル発生時に自社を守る唯一の手段であり、建設業許可を維持するための絶対条件です。
✅ 契約締結時の3大チェックポイント
① 着工前に締結しているか?
(口約束や工事開始後の契約は、19条違反のリスクがあります)
② 法定16事項が漏れなく記載されているか?
(特に「価格変動に伴う代金変更」の定めは昨今の資材高騰対策に不可欠です)
③ 適切な見積期間を確保しているか?
(下請負人への強引な短期間依頼は、行政指導の対象になり得ます)
当ブログの記事は、行政書士試験合格者としての学習・研究の一環として作成したものです。
現時点では行政書士登録前の立場であり、専門家としての助言や業務提供を目的とした内容ではありません。最新の法改正や個別事情については、必ず行政庁や行政書士等の専門家へご確認ください。